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資本主義を語る

資本主義を語る (ちくま学芸文庫) 資本主義を語る (ちくま学芸文庫)
岩井 克人 by G-Tools筑摩書房 1997-02
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商業資本主義においては共同体と共同体のあいだの価値体系の差異、産業資本主義においては労働の生産性と実質賃金率とのあいだの差異、そして現代的な資本主義においては、企業と企業のあいだの生産技術や製品仕様や通信ネットワークの差異によって利潤が生みだされてきた

本書は『不均衡動学』の提唱者である経済学者岩井克人氏による、資本主義論です。

第Ⅰ部において「資本主義」が語られていますが、その第一章で、岩井氏はマルクスにおいて断絶とみなされていた「商業資本主義」と「産業資本主義」を、「差異の原理」によって連続のものとみなすことから始めます。そして、そのような「差異」から捉え直した資本主義論を現在の「ポスト産業資本主義」へと展開していきます。

面白いのは第二章で、資本主義論において「利潤」がどのようにして生まれるのかを「差異」から説明しようとした岩井氏は、当然今度は「差異」がどのようにして生まれるのかを説明しなければなりません。ここにおいて、岩井氏の「不均衡動学」なるものが登場するわけです。

つまり、岩井氏は「利潤」は「差異」から生じ、「差異」は「不均衡」から生じるといっているのです。そしてその「不均衡」は「均衡」の例外として現れるものではなく、長期的に続いているものだと提言することで、ここにおいて岩井氏は主流の経済学と決定的に対立することになります。
なぜなら、主流の経済学においては「均衡論」が支配的であったからです。
こうした主流派に対して自己の経済学理論(特に不均衡の持続可能性)を主張する際に彼が援用したのが「進化論」でした。

本書では、そのような岩井氏の「不均衡動学」および、そこから描き出される資本主義論を理解するにあたって非常にわかりやすいものとなっています。
また、その他にも「法人」や「社会主義」への興味深い議論も収録されており、非常に平易で、読みやすく、かつ楽しめる本となっています。

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