ガイアの夜明け 「獲らずに育てろ! ~世界をギョっと言わせる養殖技術」

先日放送されたガイアの夜明け2010年8月17日放送分では、日本の新しい養殖技術が紹介されていました。

2009年10月にモナコで行われたワシントン条約事務局における「クロマグロの国際取引の原則禁止を求める決議案」は否定されましたが、2006年11月26日に開催された大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)では、「クロマグロの地中海および東大西洋での漁獲枠削減」が決定されています。(Yahoo JAPANニュース)

こうした中で、たとえば地中海で漁業を行うスペインの水産会社では、自社費用負担で漁船にICCAT職員の同行を義務付けられ、彼らのサインがなければ輸出や国内販売が一切できないといった現状にあり、厳しい規制と監視のもとでなかには撤退する企業も出ているとのことです。

またそういった世界的状況において、当番組ではたとえば回転ずしチェーンの銚子丸を例に、今日本国内においてマグロの流通量が激減していることを冒頭で紹介しています。

     

以上のような背景をもとに、今週の『ガイアの夜明け』では、世界的な人口増加に伴う水産資源の枯渇問題に対する革新的な新技術として、日本の養殖技術が紹介されました。

そこで紹介されたのは主に3つの例で、「近畿大学によるクロマグロの完全養殖」・「岡山理科大学の山本俊政准教授による好適環境水」・「栃木県那珂川町の温泉トラフグ」です。

     

「近畿大学のクロマグロの完全養殖」に関しては、すでに多くのマスメディアで繰り返し報道されていますので、今回の番組ではそれがこれまでスペイン等で行われていた「畜養」という技術との違いを説明する程度でした。近大クロマグロについてはこちらをご参照ください。

     

岡山理科大学山本准教授の好適環境水は、同番組において以前「あなたの知らない水族館」で取り上げられていたそうです。この好適環境水なるものは、どんな魚でも(淡水魚でも海水魚でも)生きることができる水だということで、海水中に含まれる約60種類の成分のうち、海水魚にとって必要な数種類の成分を特定できたことから開発されたそうです。

そして今回の番組で取り上げられたのは、この好適環境水という技術を活かして「陸上」でマグロを養殖するという山本准教授の新たな試みについてでした。山本准教授は、今後2-3年で、体長1メートルまで成長させる実験に取り組まれるようです。

     

最後に番組で紹介されたのは、栃木県那珂川町の町興しの一環として民間経営者の野口勝明さんが取り組む陸上での「温泉トラフグ」の養殖です。

町の温泉の水質が、有毒物質(重金属類)を含まないナトリウム塩化物泉だったことから、野口さんは廃校となった小学校を利用して「温泉トラフグ」の養殖に取り組んでこられました。町としても町のPRになると考え、小学校の無償使用許可と年150万円の補助金など、バックアップされているようです。これから少しずつ販路を確保し、事業化に向けて取り組まれていかれるとのことでした。

     

以上が番組概要ですが、特に興味深かったのは好適環境水の山本准教授と「温泉トラフグ」の野口さんとのコントラストです。(こういったコントラストの演出が好きな番組ですね…)

野口さんは、自身の商品である「温泉トラフグ」が地元有力者の試食会へと出荷される際に、「愛娘を嫁に出すような気持ち」と述べられていました。また、ジャパン・インターナショナル・シーフードショーに出展された際には、他の企業がショーアップされたブースで自社製品をPRするなか、野口さんは端のほうのスペースに手作りブースということもあって思うようにPRできずしょんぼりされていましたが、その時に「私ら田舎から来たから(派手でスタイリッシュなショーアップなんて出来ない)」と話し、続けて「このフグ(温泉トラフグ)も田舎者だからびっくりして(元気に泳ぎ回らない)」と呟かれていました。

こういった描写から野口さんの「温泉トラフグ」に対する並々ならぬ愛情が感じられました。成長して出荷するまでたかだか1年という短いスパンではありますが、自社商品という位置づけ以上に、そこには生き物に対する愛情がありました。

一方で、番組内の編集された一部分を観ただけという前置きは必要ですが、山本准教授のクロマグロに対する接し方は、あくまで科学者のそれであったような気がします。たとえば好適環境水の水槽にクロマグロの稚魚を放す瞬間、助手の生徒に対して「(放すのに)そんなに時間をかけちゃダメだ」というようなことを言っておられましたが、そこからは生き物に対する愛情というよりは、実験におけるプロセスの最適化といった印象が拭えませんでした。

つまり、山本准教授にとって、クロマグロとは研究材料以上でも以下でもない、というような気がしたのです。(あくまでTVの一番組の一部を観ただけの感想ですが)

     

一方では、小規模ながらも生き物と地元の町への愛情をもった野口さんが描かれ、もう一方では研究者として生き物への愛着をいまいち感じられないものの、世界的な食糧危機にさえ応用できるかもしれない山本准教授の研究が描かれる。そのような演出としてのコントラストの内に、最終的にそれらの生き物を消費して生存している私たちは、生き物との共存・共生をどのように考えていくべきでしょうか、という番組のメッセージが込められていたのだと思います。(宮崎口蹄疫のことも頭によぎりますよね)

     

以上。

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